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きょうの枕草子/最果タヒ

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著:最果タヒ
発行:中央公論新社
判型・ページ数:四六判 176ページ

随筆って、心が実在することを残す文学だと思うんです――。

秋田魁新報「ハラカラ」連載企画が単行本化。
詩人・最果タヒが、選り抜き訳し下ろした、あたらしい『枕草子』。
矢野恵司氏のイラスト22点を掲載。

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 春はあけぼの。
 だんだん白くなっていく、空の山に触れているところが、すこし明るくなるころ、紫に染まった雲がほそく、左右に流れているから。

 夏は夜。
 月があれば当然だけれど、いない闇夜も蛍がたくさん飛んでいたり、たくさんでなくてもひとつ、ふたつ、って感じで、ほのかに光って飛んでいるから好き。
 雨とか降るのも、結構好きだよ。

 秋は夕暮れ。
 夕日がぐっと、山のぎりぎりのところまで来て、からすが寝床へと帰っていくところ。みっつよっつ、ふたつ、みっつ、みたいにして急いで飛んでいくのがいいなぁ。さらに言うと雁が列を作って飛んでいるのが小さく見えるのとか、すごく好き。
 日が完全に沈んで、そうして風の音がする、虫の声がする、もう、これはどうにも言葉にできないなぁ。

 冬は早朝。
 雪が積もっている日の朝は、もちろん、言わなくてもわかるよね、霜がとても白いのとかもいいね。でもそういうのがなくても、ものすごく寒い日に火を急いで起こして、炭火をあちこちに持って運ぶのもすごく冬の朝って感じする。ただ昼になって、ぬるくなってゆるんでいくと、火鉢の火も気づいたら白い灰まみれで、それはほんとやだな。

(本文 一の段より)

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